細胞治療の根本的な製造技術の革新をもたらす、細胞ファイバとは/株式会社セルファイバ

細胞治療の課題を解決する細胞ファイバ技術『株式会社セルファイバ』


―Problem-

細胞治療の可能性と高額な製造コストの課題


『細胞治療」とは、生体から細胞を取り出し、疾患を治療する方法で、近年世界中で研究が進められるようになってきた新たな治療法です。株式会社セルファイバでは、この細胞治療の分野において、事業開発を行っています。従来の細胞治療のなかには、難治性とされてきた疾患の症状が改善、寛解する事例もあります。2019年には、日本でも白血病に対するCAR-T細胞療法と呼ばれる治療が保険適用になりました。しかし、遺伝子操作という高度な技術を用いて製造するため、時間やコストがかかり、薬価が約3350万円となっている現状です。こうした細胞治療に代表される、再生医療の高額な医療費はひとつの課題でもあります。今後、「治療法はあるのに、費用の問題で治療を受けることができない」という事態が起こりかねません。


―Solution―

細胞治療の課題を解決する大量培養技術


細胞治療の製造コストの課題を大量製造によって解決するアプローチは進められています。そのなかでも、治療に必要な細胞数には大きく差があります。

 

例えば、パーキンソン病や網膜変性症などの治療に必要な細胞数は10万個、100万個といった数ですが、現在の技術でも量産することが可能です。ところが、糖尿病、心筋梗塞などを治療するには10億個、100億個の細胞数が必要になります。これは現在の技術で量産することは難しく、一人~数人分の製造が限界です。株式会社セルファイバでは、この問題を解決するために『細胞ファイバ』の技術を使い、200億細胞/Lの大量培養を可能にしました。


―Technology―

株式会社セルファイバの基盤となる技術『細胞ファイバ』


 『細胞ファイバ』とは、髪の毛(直径数百マイクロメートル)ほどのゲルチューブの中に、均一に細胞が詰まっている構造体です。人口イクラを作るゲルと凝固剤を、『マイクロ流路』と呼ばれる空間に細胞を精緻に順序よく合流させることで、細胞ファイバを作ることが可能です。これらの技術は株式会社セルファイバの創業者でもある竹内昌治、尾上弘晃らによって開発されました。 

細胞培養に置いて、これまでは、凝集、細胞の不均一化が起こり、単位体積あたりの生産性に限界がありました。しかし、細胞を細胞ファイバ内で培養すると、細胞は空間を満たすように増殖をしていき、大きさを制御したまま細胞を増やすことが可能になります。最初にこの技術が開発された時点では、従来と比較して同じサイズのバイオリアクター内で20倍ほどの細胞数を得ることができました。

実際に治療で使える細胞の製造を可能にするため、細胞ファイバを大量に作製・培養する技術の開発を行い、これまでの100倍ほどの量の細胞ファイバを作製する技術を確立しました。


―Business Model―


株式会社セルファイバでは、細胞を保有している製薬会社や細胞治療を開発しているバイオテック企業との共同研究が始まりました。実際に治療で使う細胞でも高確率の培養が行えるか、などの技術評価を行っています。こうした取り組みを通じて、細胞の大量製造技術の開発、さらに細胞医薬品を合理的な価格でより多くの人に届ける役割を担っていきたいと考えています。


―Impact―


細胞ファイバの技術は人工的に臓器を作る取り組みにも用いています。例えば、臓器そのものではなく、そのモデルとなるミニチュアの構造物として、血管や尿細管などが挙げられます。こうした人間の身体の中で管状の構造になっているものを、体外で製造するのは難しいです。医薬品の開発では、動物実験が行われているような領域もありますが、ヒトの組織を用いることで、より精度良く開発を行うことが可能です。そこで、株式会社セルファイバでは、細胞ファイバの基盤技術を用いて、直径20マイクロメートル極細の細胞管を作り、創薬分野で活用していくことを検討しています。

また、近年では自動培養装置により、一定の製造コストの削減も見込まれますが、既存の低分子・バイオ医薬品のように普及するかどうかは、製造技術の革新が鍵を握っています。株式会社セルファイバでは、食品分野でも、細胞の産業利用のあり方を根本的に変えるような事業にも挑戦しています。


2020-06-01



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